2009/10/08, , ダイヤモンドオンライン
(社)日本通信販売協会(JADMA)の推計による2008年度の通信販売の市場規模は対前年度比6.7%増の4兆1400億円。この数値は8月21日に発表されたが、当協会の事務局に何人かの方々から意見や質問をもらった。中でも多かったのが6月26日に日本経済新聞が発表した「通販市場は8兆円を超え、コンビニ・百貨店を超えた」という記事の数値とあまりにも格差があるのではないか、ということであった。
この2つの調査の数値の格差は、もちろん推計方法による違いにある。
JADMAの場合は、会員社(調査時点で489社)の数値に、非会員社で売上数値が公表、あるいは推計されている企業、約100社を加えたものを通販市場として推計している。
これに対して、日経新聞は野村総研とJADMAの発表数値をもとに作成している、とされている。その基となっている野村総研の調査は「IT主要5市場の分析と規模予測」(2008年12月15日発表)であり、その中の消費者向け電子市場規模が基礎となる数値で08年度は6兆2255億円となっている。
ただこの数値は、推計値でサービス販売、つまりチケット関係が含まれており、かなりの割合を占めていることが予想され、JADMAが物販を主とした通販市場を想定していることとは隔たりがあり、ネット販売市場が大きくとらえられているものと見られる。
逆にJADMAの数値は特定できる企業の数値を加算したものであり、市場規模の推計としてはミニマムである。こうした格差は、ある面、実態把握が難しいネット販売の特性を表したものであるが、市場経済におけるネットの影響が増大することを踏まえ、今年度、経済産業省が行う予定の「消費者向け電子商取引実態調査」に期待を寄せるところである。
いずれにせよ小売業界の中で、通信販売市場がインターネットを牽引役として成長を続けていることは事実であり、極端に言うならば「ネット通販の独り勝ち」のような状況でもある。
今一度、流通、小売市場におけるインターネットの価値を考えてみたい。
JADMAが設立されたのが1983年、このあたりが通販業界としてのスタートである、とするならば日本の通販市場は4半世紀を過ぎたところである。メディアが店舗でありコミュニケーションツールでもあるところから、新聞、TV等のマス媒体をはじめさまざまなメディアで通販は行われた。そしてカタログやダイレクトメールといった自社媒体展開により、存在価値を高めていったが、インターネットの登場の以前と以後とでは購買行動を大きく変えたことに注目したい。
筆者が考えるには、インターネット以前の紙、あるいはTVといった媒体はリアルな店舗の延長であったのではないか、ということだ。ところがインターネットは無限大なバーチャル空間という、まったく別次元の中に商店街がつくられ、利用者は「検索」あるいは「口コミ」といったまったくこれまでにない商品選択方法による新たな購買チャネルが創造された。
また別の視点から見るとリアル店舗、そしてカタログ等の通販と比較してネット通販は利用者サイドに立った小売モデルであることだろう。前述した店舗ごと、通販企業ごとの選択肢という限定された状況からさまざまな切り口による商品選択は、購買方法での「革命」とも言えるものである。
携帯電話通販が10%を超える
JADMAの「全国通信販売利用実態調査」を見ると、よりいっそう、ネット通販の浸透が進んでいることがわかる。「通販利用者がどの媒体を利用したか」という調査結果をみると、05年度まではカタログが最も利用割合が高かったが、06年度にネットが第1位となって以降も増加が続き、08年までの3年間で9ポイント増加し、08年では過半数を超えている。
今、通販市場で最も利用されている媒体は「ネット」である。そして、さらに注目されるのは携帯電話による通販利用者が08年は10%を超えたことである。
この背景には、仕事等でPC(パソコン)を使わない限り「通常の生活の中ではネット利用は携帯」という実態がある。携帯機器の進化、パケット通信定額制加入者の増加により、今後、ネットはその利用スタイルに応じて、使い分けられていくことが考えられる。
一方、他のネット以外の媒体は衰退していくのか、という視点から見ると、それは非現実的であろう。媒体、という視点から見たとき、年代、利用する商品、メディアに対するロイヤルティ、利便性等で利用者は使い分けることが自然であることから見ても他の媒体も一定の存在感は継続されていくものである。重要なことは「ネットが先にありき」ではない、ということだ。楽天市場でも、利益を出している出展者は一部であり、その他の多くは比較対象のための出展者である。顧客が購入するのは「よりよい商品。そしてリーズナブル」であることは小売業の普遍の命題である。さらにキラープロダクトを持つ通販企業の優位性は、最近の成長率が高い事業者を見れば明らかであり、ネットオンリーでないことも明白である。
新たな通販事業モデルの可能性
米国と日本の通販市場の違いは、その発展過程の違いにある。通販の先駆者シアーズが、その後、百貨店に進出し小売業界のトップに君臨し、さらには市場成長が止まった中でマスマーケティングの限界が叫ばれ、ダイレクトマーケティングに対する理解が深まった。
それに比べると、日本の場合、長く小売市場の中のニッチな存在としてあったことが、いわば「店舗、先にありき」または「店舗の下に見る」というような思考が続いた。
このことは小売業のみならず、大手企業全般の通販、あるいはダイレクトマーケティングに対する理解不足を招く結果となった。現在、通販市場は通販専業社に加えて、単品通販企業、第1次・2次産業、大手メーカー、と事業者の裾野が広がり、業界的なくくりかたではなく、手法として見ることが自然となっている。今後の通販事業の動向で注目されるのは、店舗を主体とする大手小売流通企業の通販事業の取り組みである。さまざまな小規模企業、あるいは地方の製造業、個人商店は楽天市場に代表されるモールが認知されることにより、参入することが容易となった。
そしてネットモールにより、前述のごとく利用者は利便性を享受した。この利用動機のコアは「商品の選択性の拡大」である。しかし、その魅力が確保されつつ、なじみのある店舗の利便性も付加されたら、新たな通販事業モデルが創られていくのではないだろうか。
現在、話題のネットスーパーは、通販というより「店舗の付帯サービス」であるが、それがさらに進化してく可能性はあるのだろうか。筆者は商品ニッチ型の通販の限界をかねがね提唱してきたが、これには反して、新たなビジネスモデルを構築した企業、つまりアマゾンやアスクルが日本の通販企業のトップ1、2位であることは重要なことである。
店舗、あるいは業態を超え、顧客にとっての付加価値が訴求できる小売業が支持される時代となった今、店舗主体の小売業が通販事業を考えるべきであることを痛切に感ずる。